Fauna+DeSIGN 一級建築士事務所ファウナ・プラス・デザイン

(0)はじめに

□「犬と住む家」暫定txt版|p01p02p03|p04|p05p06

以下の「犬と住む家」についての文章は、2001年から2005年にかけて、ペット住文化研究家:廣瀬慶二によって書かれたものです。現在、ファウナプラスデザインでは、10年に渡るフィールドワークを元に分析した結果、「犬と住む家の間取り」に関して、当時と異なる「答え」を持っています。基本姿勢は変わりませんが、若干、古い考え方が述べられていることを御理解下さい。最新の事例については、ペットと住む家の工夫(現行サイト内)で読むことが出来ます。

(5)空間構成(レベル2)

■「基準寸法」
通常木造住宅は910mmのモジュールで造られます。いわゆる3尺=半間です。しかし建築材料は未だそれにしたがっているものの、現代の日本人の体格には到底あてはまらない基準寸法です。簡単に言いますと910mmの間隔で105角の柱を並べ、その間を廊下とする時、廊下の幅員は910-105=805となり、狭すぎます。これは「犬と住む家」に限った話ではありませんが、犬と住む家の場合、廊下の巾は最低でも870mm必要と考えています。つまり廊下の部分だけ910モジュールを外す必要があります。
■「縦のつながり」
通常2階建て以上の住宅には階段がつくことになります。階段は犬と共生する上でとても大切な部分です。私どもは犬種によって階段の仕様を変えています。例えばミニチュアダックスフントの場合は階段の上り下りが背骨や足に負担を与えるので階段を昇らせないようにします。「しつけ」で対処できる部分ですが、飼い主が余りに階段と犬について気を配りすぎている時、ワンちゃんが階段を昇ったり降りたりしそうな気配を感じて、あわてて連れ戻したりする行為は逆効果かも知れません。状況によるので、断定はできませんが、「階段に近づくとご主人様が構ってくれる!!」という感じの「遊び」と解釈するかもしれないからです。やはり建築的に解決しましょう。
■A:階段を使わせたく無いとき
2種の方法があります。
・階段用ドッグフェンス
あらかじめ高さ90cmほどのドアを階段部分にとりつけます。この時、私どもの場合は、ドッグフェンス(=ドア)が開放時、人間の邪魔にならないように壁に埋め込むように考えています。この部分には慎重なディテールが必要とされます。後付けの既製品は構造上、美しいものが見あたりません。リフォームや新築の際には是非考慮したいものです。
・スケルトン階段
お散歩をしていて道路の網状側溝蓋(グレーチング)をワンちゃんが嫌がることがよくあると思います。多くの場合、犬は足下に不安を感じるような場所を嫌います。その性質を利用して犬は嫌がりますが、人間の使用には問題のない開放性の高い階段を私どもは用いています。ただし、グレーチングを踏み板に使うのは少し抵抗がありますから、鉄骨造で蹴込みの部分が空いている階段がおすすめです。犬の体高ではまっすぐに進むと、そのような階段では落ちそうになりますので、犬は好んで昇ろうとはしないはずです。(何事にも例外はありますが。。。)
■B:犬も上り下りするとき
反対に大型犬を飼われていて、犬も積極的に階段を使う場合は、その階段の「踏み面」「けあげ」など、要するに階段の角度に気を使いますワンちゃんの体型に合わせて上り下りしやすい階段を設計するわけです。私の考えでは、そのような階段は人間が高齢化したときにも昇り降りしやすい階段になると思います。「シニアのワンちゃんに合わせて家を作ると人間も老後に楽になる!」こんな風に考えて私たちは住宅の設計をしています。思い切って、住宅内の縦動線をすべてスロープにする案を考えたことがありますが(犬が終わることなく走り回れる!)こんな感じ↓になります。
■スロープの家
階高(1階床と2階床の高差):2.8M、スロープ傾斜:1/8、スロープ幅:90cmで設定しますと、このスロープに必要な最低寸法は、半径4.7Mとなります。2層吹き抜けの正方形の部屋の中にあるとすると9.4M×9.4Mの部屋(53畳)となります。ちょっと個人住宅のスケールではないですね。しかし、発想を変えて、スロープの円の中に居住空間がある設計をすると、うまくいきます。外壁に沿ってスロープがあり、吹き抜けを持つ 楽しい家になるでしょう。

(6)犬と住むためのディテール

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