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1)はじめに
「犬と住むための間取り」には正解と言える物がありません。
人間だけを考えても暮らし方は千差万別。
現在当たり前のように作られる●LDKというような言葉も
実は60年代に考えられた物です。
私の場合、ワンちゃんの性質に合わせてプランを考えます。
故にその可能性は無限に広がります。
また「便利さ」のみを考えて設計するのもつまらないので
「愛犬が絵になる」シーンをよく考えます。
例えば暖炉の前でお昼寝する光景や
ワンちゃんの毛の色に合わせたフローリングなど。
日本の多くの家のデザインは「室内飼い」に馴れていません。
そこでは「豊かさ」ではなく「混乱」が起きています。
家の中に犬がいることを、「豊か」に感じることができる空間づくりを
私どもは目指しています。
2)空間構成(レベル1)
「進入禁止エリア」
家の中で犬が自由に行き来できる空間を制限するのが良いでしょう。
しつけの上でも大切ですし、掃除の面からも有効です。
代表的な考えとして「和室」を進入禁止にします。
和室はワンちゃんが「破壊」することで被害が大きくなる要素が
たくさんあるからです。(「破壊行動」の原因についてはここでは
ふれません。)常にオーナー様がコントロールできれば
必要ありませんが、物理的に近づけないようにする方が良いと思います。
マンションなどではリビングルームに和室をバリアフリーで
つなげる手法が多いですが、私どもの場合は
廊下やホールを挟み、リビングルームのドアを
Wドアにして進入不可とします。
また2階へ上がる階段を進入禁止とすれば
多くの場合、2階の物音に反応して吠えることはないようです。
それは2階が自分のテリトリーではないからです。
「玄関のつくり」
配達の人が来ると玄関で吠え続けるワンちゃんがいます。
印鑑を押したりしてお仕事が終わると帰られます。
犬も配達の人が帰ると吠えるのを止めます。
それは吠える仕事が終わったからです。
犬には配達という人間の仕事が簡単には分かりませんから
「知らない人を追い返す」仕事だと考えるのです。
そしてその仕事は100%達成できるので満足感がありますが
何故か飼い主には誉めてもらえない。それどころか、
飼い主は犬が吠えることに怒って、大きい声を出しています。
「親分も一緒に吠えている!だからもっと吠えなきゃ!」
案外、犬はそんな風に考えているかもしれません。
この状態を私は「ポストマン・シンドローム」と呼んでいます。
この悪循環を断ち切るためには、犬が(人間が)無駄吠えをしないように
躾ることが大切です。建築的にはポストマン・シンドロームに陥らないように
玄関と犬の居住スペースをできるだけ離して、
視界からも外す様にしています。
「室形状」
これは私のこだわりですが、室内でもワンちゃんが
「持ってこい遊び」をダイナミックにできるように
設計します。具体的には細長いリビングルームです。
また室内にたくさん物があると邪魔なので
造りつけ家具を床から浮かせて付けます。
直線距離で9m走れれば小型犬なら十分楽しめます。
かつては廊下でも良いと思っていましたが
前述の「玄関のつくり」でも書いたように
あまり玄関付近に自由に行けるようにはしたくないので
最近はこのように考えています。
3)室内環境
<冬>
犬や猫の正常体温は38℃〜39℃。
家の中では暖房が効いていますが、通常の暖房ではあたたかい空気は
上に昇ってしまい、犬の立ち位置では人間が思っているよりも
室内温度は低くなっています。
犬や猫のことを考えると床暖房は必需設備と言えるでしょう。
また、床暖房を入れない場合、ペット用のホットカーペットを
使用することがあると思います。私どもの場合はon/offができる
小型の専用コンセントを壁に埋め込み設置します。
さて、あたたかいお部屋は犬や猫にとってありがたいことに間違いはない
ですが少し問題があります。「シックハウス症候群」という名でご存じだと
おもいますが、ホルムアルデヒドや揮発性有機化合物(VOC)とよばれる
化学物質が室内空気中に放出されることが原因で、体調が悪くなったりする
ことがあります。
建築基準法が改正され通称「シックハウス法」が施行されてから
24時間換気システムと建材の選択が義務づけられましたので
この問題は徐々に解決されていくと思いますが、それでも100%
取り除くのは難しいでしょう。
問題とは、部屋を過剰に暖めると、この化学物質の放出量が著しく
増大することです。とはいうものの体質が過敏な方以外は(動物を含め)
神経質になりすぎるのもどうかと思いますので、建材に気を遣い、
過剰な暖房を控え、窓を開けて換気するというあたりまえの事が大切だと思います。
もう一つはノミです。
冬場でも部屋があたたかいと、お散歩中にもらってきたノミは室内で繁殖します。
ノミ自体、人間にとってもイヤなものですが、犬にとっては
それ以上に「犬条虫症」の原因となる瓜実条虫(寄生虫)の中間宿主ですので
徹底的に駆除しなくてはいけません。やはり掃除のしやすい部屋がいいですね。
もちろんノミを家に持ち込まなければ全く問題ありませんが。
<夏>
犬猫にとって室内温度が重要になるのは冬よりも夏です。
留守中は普通部屋の窓を閉め切っていますので
室内温度はぐんぐん上がります。帰ってきたらワンちゃんが、
たくさんのよだれを流し、激しく呼吸をしていたらそれは熱中症です。
これはかなり危険な状態です。命にかかわります。
住宅と犬猫について考えるとき絶対に考慮しなくてはいけない部分です。
では、どうしましょう?
24時間換気システムも有効ですが、
1)防犯上問題のない「風の道」を計画的に作る。
2)ケージの位置を慎重に決める。
3)屋根の断熱をさらに強化する。
とりあえずこの3点を私は重視しています。
1)についてはその土地固有の風の道を設計段階から調べ
給気窓と吹抜けを効率よく設置することで常に室内に風が
通り抜けるようにします。また給気側の屋外には植裁をし
緑で冷やされた空気を取り入れます。
2)はプランニングの話ですね。
私どもは常にサークルやケージ設置用のニッチ(窪み)を
リビングルームに計画するので(当社ではドッグシエスタと呼んでいます)
その適切な位置を考えます。
3)は既に断熱している上にさらに熱負荷を軽減する工事をするわけで
私どもの場合は「屋上緑化」で対応しています。
屋上緑化はコストがかかったりメンテナンスが大変という
先入観があり個人住宅ではあまり普及していませんが、
そんなことはありません。
当社の設計ノウハウですので詳しくは言えませんが
「セダム」という植物と、特種な軽い土を用います。
「セダム」というのはサボテンのような、多肉植物で
乾燥に強く世話のかからない草です。かわいい花も咲きます。
4)建材
<床>
滑りにくい床材を選ぶに越したことはありません。
以前はコルクタイルが良いと思っていましたが、テクスチャーが少しくどいので、
現在は無垢のフローリングに自然オイルを塗装したものをおすすめしています。
中でも、チーク材のフローリングは水に強くて木目も美しく素敵です。
私はフローリングがスタンダードだと思っていますが、
いろいろな考え方があります。
毛が抜けやすい犬種だったり、吐き戻すことがおおい
ワンちゃんの場合は、掃除を徹底的に行えるように
タイルを使いきちんと排水口を設置しておけば、床の水洗いができます。
また、「置き畳」という手段もあります。
普及品のフローリングにワックスを丁寧にかけると
滑りますので、ラグマットなどを敷かれる場合が多いと思いますが、
なかなか良いデザインのものがありませんので、
発想を変えて、薄い「スタイロ畳」をフローリングの上に置くのも
オシャレです。
でもその前にワンちゃんをチェックしてあげてください。
1)足裏の毛をカットして肉球が床にくっつくようになってますか?
2)爪は切ってあげてますか?
3)適正体重ですか?
念のために書きました。「あたりまえです。」という方にはごめんなさい。
<壁>
腰壁があるといいですね。どうしても床に近い部分の壁は汚れますので
丈夫な木でしっかり作りたいものです。また、壁を室内環境のことを考えて、
流行の「珪藻土」などの左官仕上げにする場合、施工上の問題があり、
私どもは必ず腰壁を作ります。
また、クロス貼りの壁が床まであるよりは、腰壁があった方が
ワンちゃんが家の中でかっこよく見えますよ
5)空間構成(レベル2)
「基準寸法」
通常木造住宅は910mmのモジュールで造られます。いわゆる3尺=半間です。
しかし建築材料は未だそれにしたがっているものの、現代の日本人の体格には
到底あてはまらない基準寸法です。簡単に言いますと910mmの間隔で105角の
柱を並べ、その間を廊下とする時、廊下の幅員は910-105=805となり、
狭すぎます。これは「犬と住む家」に限った話ではありませんが、犬と住む場合
廊下の巾は最低でも870mm必要と考えています。
つまり廊下の部分だけ910モジュールを外す必要があります。
「縦のつながり」
平屋でないかぎり家には階段がつくことになります。
階段は犬と共生する上でとても大切な部分です。
私どもは犬種によって階段の仕様を変えています。
例えばミニチュアダックスフントの場合は
階段の上り下りが背骨や足に負担を与えるので
階段を昇らせないようにします。
「しつけ」で対処できる部分ですが、
飼い主が余りに階段と犬について気を配りすぎている時
ワンちゃんが階段を昇ったり降りたりしそうな気配を感じて
あわてて連れ戻したりする行為は逆効果かも知れません。
状況によるので、はっきりとは断定できませんが、
「階段に近づくとご主人様が構ってくれる!!」という感じの
「遊び」にワンちゃんは解釈するかもしれないからです。
やはり建築的に解決しましょう。
A)階段を使わせたく無いとき
2種の方法があります。
・階段用ドッグフェンス
あらかじめ高さ90cmほどのドアを階段部分にとりつけます。
この時、私どもの場合は、ドッグフェンス(=ドア)が開放時、
人間の邪魔にならないように壁に埋め込むように考えています。
この部分には慎重なディテールが必要とされます。
後付けの既製品は構造上、美しいものが見あたりません。
リフォームや新築の際には是非考慮したいものです。
・スケルトン階段
お散歩をしていて道路の網状側溝蓋(グレーチング)をワンちゃんが
嫌がることがよくあると思います。
多くの場合、犬は足下に不安を感じるような場所を嫌います。
その性質を利用して犬は嫌がりますが、人間の使用には問題のない
開放性の高い階段を私どもは用いています。
ただし、グレーチングを踏み板に使うのは少し抵抗がありますから
鉄骨造で蹴込みの部分が空いている階段がおすすめです。
犬の体高ではまっすぐに進むと、そのような階段では落ちそうになりますので、
犬は好んで昇ろうとはしないはずです。
(何事にも例外はありますが。。。)
B)犬も上り下りするとき
反対に大型犬を飼われていて、犬も積極的に階段を使う場合は
その階段の「踏み面」「けあげ」など、要するに階段の角度に気を使います。
ワンちゃんの体型に合わせて上り下りしやすい階段を設計するわけです。
私の考えでは、そのような階段は人間が高齢化したときにも
昇り降りしやすい階段になると思います。
「シニアのワンちゃんに合わせて家を作ると人間も老後に楽になる!」
こんな風に考えて私たちは住宅の設計をしています。
思い切って、住宅内の縦動線をすべてスロープにする案を
考えたことがありますが(犬が終わることなく走り回れる!)
こんな感じ↓になります。
・スロープの家
階高(1階床と2階床の高差):2.8M
スロープ傾斜:1/8
スロープ幅:90cm
で設定しますと、このスロープに必要な最低寸法は
半径4.7Mとなります。
2層吹き抜けの正方形の部屋の中にあるとすると
9.4M×9.4Mの部屋(53畳)となります。
ちょっと個人住宅のスケールではないですね。
しかし、発想を変えて、スロープの円の中に
居住空間がある設計をすると、うまくいきます。
外壁に接してスロープがあり、吹き抜けを持った
楽しい家となるでしょう。
6)犬と住むためのディテール
「玄関ドアの考え方」
犬と歩くときに、左右どちらにつけるかで、玄関ドアの開く方向が決まります。
右側につけている場合は「左吊りもと手前開き」とします。
何故かというとその逆の場合では右側にいるワンちゃんが開いたドアに
挟まれてしまうからです。当然ながら左につけた場合(この方が多いでしょう)
「右吊りもと手前開き」になります。
「犬仕様ディテールに用いる素材」
イメージ版でいくつかご紹介していますが、最近は定番の「リードフック」
などは屋外に晒されていますのでステンレス製が良いでしょう。
「ドッグフェンス」などは木製でもいいですが、引っ掻きや噛みつきで
痛まないものが良いです。
後で詳細に書くつもりでいますが、建材の表面温度にもこだわってみたい
ものです。例えば磁気質タイルの表面はひんやりと冷たく感じます。
弊社の作品では、ニッチ状の部分の床を白いモザイクタイルで貼り、
暑いときにワンちゃんが「伸びて寝る」場所として計画しています。
先の項目では「床は無垢のフローリングがおすすめ」と書きましたが、
アクセントにタイルを混ぜるのも良いものですよ。
7)防音性能
このページでは「個人住宅」に絞って私の設計手法を書いていますので、
集合住宅については触れていません。ですが、戸建て住宅であっても
密集市街地では立体的に重なってはいないものの、密度は集合住宅みたいな
ものなので犬の無駄吠えについては近隣のことを考え考慮したいものです。
「無駄吠え」については都会で暮らす以上、オーナーが責任を持って
しつけで直すべき部分ですが、できるだけ建築側でも対応していこうと
思っています。具体的にはRC造(鉄筋コンクリート造)を用いることを
お勧めします。あとは、防音性能(遮音等級)の高いサッシですね。
「躯体構造」
重い物質には「音が通りにくい」ので、簡単なのは、「壁が重い」
RC造が、防音には有効です。RC造2重壁にすれば完璧ですが、そこまでする
必要はないでしょう。(個人的にはいろんなメリットがあるので、設計して
みたいのですが。。。)
また、やはり「木の家がいい」という方は「混構造」という方法が
あります。3階建ての場合に最も有効です。
1階はRC造でつくりその上は木造。ワンちゃんのお留守番は
1階という感じでうまくいくでしょう。
「遮音等級」
外部建具の遮音等級の表し方は一般にJISで定めた、T1〜T4までの
表示で行います。
T1から一般に「防音サッシ」と呼ばれ(最近は言いませんが。。。)
数字が大きいほど遮音性能は高くなります。
最近は、高断熱住宅の普及からペアガラスの採用が流行っていますので、
それと合わせて、これから住宅を建てる場合にはサッシの遮音等級を
気にしてみてはいかがでしょうか?
(ペアガラスもガラスの厚みの組み合わせで遮音性が高まります。)
ペアガラスを使えば最近では自動的にT1の等級が出ているようです。
8)犬の安全
室内飼いで考えるべき、犬の安全について書きます。
様々な事故を予防する上で、建築的に考えられることをいくつか挙げます。
ア)犬の目の高さにモノがないこと。
→誤飲の防止→機能的な収納の充足。
イ)不安定な家具がないこと。
→落下、倒壊による怪我防止。→造り付け家具。
ウ)夏の室温管理。
→熱中症対策。→風の道+屋上緑化
エ)衛生管理
→病気の予防。→掃除のしやすい工夫
「非常時に備えて」
エマージェンシーステッカーというものがあります。
火災時に家の中に閉じこめられた犬や猫を救出するために、
消防士さんにその存在を知らせるためのモノです。
玄関先に、犬種と頭数を書いて表示しておきます。
「犬の高齢化(その1)」
高齢化した犬の世話をするにはそれなりの覚悟が必要です。
ここでは一般的といえる、視力が衰えた高齢犬について書きましょう。
彼らは視力が衰えたとしても、嗅覚、聴覚が優れているので、
今までとまったく同じ環境でも生活していけるかもしれません。
しかし、その場合には「空間の形状を維持する」ことが必要です。
要するに、置き家具の配置を変えないということです。
その意味でも、造り付け収納や壁面収納は有効ですし、
「壁際の道を空ける」ことは好ましいと言えます。
さらに段差をなんらかの形で解消する必要もあるでしょう。
050620更新中です。。。。
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